ハマンカー(元町南/元町北)
英名 | エリア |
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Hamanka | 元町 |
伊豆大島は若い火山島であり、頻繁に噴火を繰り返しているため地表は火山灰やスコリアに覆われており、雨が降ってもすぐに地中に染み込んでしまいます。そのため、島には川や湖がなく、人々は生きる上で不可欠な水の確保に苦労し、わずかな湧水を頼りとしていました。しかし、渇水期となればこの湧水だけでは十分ではなく、水不足を補うため海岸付近に井戸を掘り、共同井戸として使用してきました。大島では水が湧き出るところを「カァ」、「カー」と呼び、この海岸付近の掘り井戸は「浜のカァ(ハマンカー)」と呼ばれていました。水道が普及した頃から使用されなくなりましたが、そのハマンカーが元町地区の南北に2つ残っています。
元町港近くにある北のハマンカーはコンクリートで蓋をされています。一方、南のハマンカーは石垣に囲まれよく保存されており、2016(平成28)年に大島町指定文化財に登録されました。内部の深さは水面まで約4m。海岸の丸石を漆喰で円形に積み上げ築かれた井戸は伊豆半島の伊東の職人たちの手によるもので、弘化(1844~47年)の年号が刻まれています。
海に近いハマンカーは、海水の塩分を含むことが避けられないため、主に雑用水(掃除・風呂等)や家畜用として使われていました。朝夕、湧水地やハマンカーから水を汲んで家まで運ぶのは女性の仕事で、大変な重労働でした。水桶を頭上にささいで歩く女性の労働姿は、島の風物詩の一つとなっていました。