旧港屋旅館
英名 | エリア |
---|---|
Former Minatoya Inn | 波浮港 |
1800年に波浮港が開港すると、風待ち港として多くの漁船が寄港するようになり、明治~昭和にかけては観光客も多数訪れ、波浮港はおおいに栄えました。
港屋旅館は、旧館が明治時代に、新館が大正時代に建築され、現在ではもちろんのこと、当時でも非常に貴重な木造3階建ての建物でした。漁業者や観光客等が宿泊し、盛況時には各階の客室は夜ごと宴席で賑わいました。緊急時と宴席の混雑緩和から、各階への階段が前後2ヵ所に設置されていて、当時の賑わいぶりが間取りにも表れています。屋根は伊豆方面の影響による千鳥波風入母屋造りで、風の強い大島では非常に珍しいものです。玄関そばの電話室のガラス扉には、郵便局の「一番」に次ぐ「電話二番」の金文字が書かれ、港と共に繁栄した旅館の隆盛ぶりを物語っています。
川端康成の小説「伊豆の踊子」に登場する踊り子「薫」は、実際に波浮港に暮らしていた踊り子「タミ」をモデルにしたとされています。踊り子たちはお呼びがかかると、この港屋旅館や旧甚の丸邸の座敷で踊りを披露し、お客を楽しませていたそうです。