生態サイト

火山活動によって形成された地形・地質を基盤とした、
海洋島ならではの多様な生態資源(動植物)

英名 エリア
英名Camellia Japonica エリアその他

椿は「大島町の木」および「大島町の花」として制定されている、伊豆大島を象徴する植物です。温暖多雨の気候と火山灰やスコリアが覆う水はけのよい地面は椿の生育に適しており、島内に推定約300万本の椿が自生しているといわれています。

縄文時代の遺跡「下高洞遺跡」の地層から椿の印象化石が発見されており、当時から島に椿が自生していたことがわかっています。自生種は五弁の花びらを持つ一重咲きのヤブツバキで、島の民謡「大島節」にも「わたしゃ大島一重の椿、八重に咲く気はさらにない」と歌われています。伊豆大島の椿は、早いものでは初秋9月頃から、遅いものでは晩春を過ぎる5月頃までと、開花期間が長いことが特徴です。

また、椿は火山ガスにも強いことが三宅島での調査で明らかになりました。火山ガスの影響で周囲の樹木が立ち枯れる中、生き延びる椿の花に、離れた森からメジロが蜜を吸いに訪れていたそうです。伊豆大島でもかつて火山ガスが放出されていて植物の生育が阻害されていましたが、その中でも生き残ったたくましい椿がその子孫を増やしていったのでしょう。

強くしなやかな幹枝と常緑の厚い葉を持つ椿は防風林にも適しており、島特有の強い季節風から家や畑を守るため周囲に数多く植えられました。そして、太く伸びた枝は薪炭材に、椿の種子は油に加工されるなど、島の暮らしに欠かせない存在となりました。小道を覆う椿トンネルや椿並木、「国際優秀つばき園」に認定された都立大島公園椿園、都立大島高校椿園、椿花ガーデンを楽しみに観光客が訪れるなど、今日でも島の観光を支える重要な資源です。


椿の受粉を助けるメジロ


アシタバ畑を囲う椿の防風林